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※ボーカロイド=歌うの専門のアンドロイドをご想像ください。
※マスターとKAITO,MEIKO,ミクの3兄弟は同居。マスターの仕事は不明(笑)各自それぞれ自室アリ。
※マスターは鬼畜眼鏡ですw そこ以外のビジュアルは各自それぞれご想像くださいw
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今日は久しぶりに個別収録だった。ミクもMEIKOももう録り終わっていて、後は俺だけ。二人は今頃自室で寛いでいるだろう。
マスターの指示は俺の音域を理解してくれているからいつでも歌いやすくて、気持ちのいい高揚感で更に声が伸びていく。まだ歌える。もっと歌える。そう感じるのが無償に楽しくて、俺は彼に歌わせてもらうのが何より好きだ。
今日も気持ちよく歌い終えて、快い疲労感に身を任せながらブースを出た。マスターがミクとMEIKOには秘密だよ、とくれたアイスを食べながら、最後に残った編集作業を淡々と進めていく主人と他愛ない、世間話にもならないような会話をしていたとき…不意に…マスターは、ただの会話の延長のように、明日の天気でも話すような気軽さで…。
愛していると、言った。
「KAITO?」
「え?…あ」
愛してる?マスターが…俺、を?
女性モデルのミクでもMEIKOでもなく、男性モデルのボーカロイドの、俺を?正真正銘男性の…マスターが?
エラー音が脳内で響く。エラーしか出て来ない。何だよ、それ。新手の冗談か?そうは思ってみても、俺を見つめるマスターの目はとても真剣なものに見えて…俺はますます『俺』の処理速度が落ちていくのを感じた。
マスターの目は困ったように、楽しそうに、眼鏡の奥から真っ直ぐに俺を見つめている。その視線に熱量でもこもっているのだろうか。電子回路に熱が生じる。そのせいかHDDに負荷がかかっていて、思考が鈍って困る。
それから逃げたくて視線を反らすと、マスターの手が俺の頬を撫でた。
主人にデリートや初期化される時に騒いだりせずいられるように、俺たちボーカロイドには怖いという感情は作られていないはずなのに、俺の身体はその手の平の温もりに慄くように小さく震えた。
「顔が真っ赤だ。まるで人間みたいだな」
くすりと唇を持ち上げたマスターは、戸惑いただ見返す事しかできない俺の唇を指先で辿りながら楽しげに呟く。暖かいその感触はどこか甘くてくすぐったい。
「どうした?どこか異常か?」
「…っかり…ません」
エラーだ。処理速度がどんどん低下している。マスターが触れている部分が熱くて、思考回路が鈍っている。
愛してる?愛してるって…。
どんな顔をするべきかもどんな事を言えばいいのかもわからなくて、ただその目から、指から逃れたい一心で己を抱くように腕を回し俯く。…だが、まるで許さないと言うように、顎を持ち上げられた。
「マス…」
それ以上の言葉は、柔らかくて暖かいものに唇をふさがれて音にならなかった。それがマスターの唇だと理解するのに要した時間を考えると、一度再起動したほうがいいのかもしれない。
「答えなさい、KAITO」
「……」
驚きに声も出なかった。キス、された?
ただ触れただけの口付けはすぐに解かれたけれど、足や指の先がじんわりと痺れて、CPUが処理できない情報に悲鳴を上げている。電気回路が軋む音がうるさいくらいだ。
「主人の質問に答えられないKAITOには…お仕置きが必要かな?」
まだ吐息が触れ合う距離を保ったまま、マスターが嫌に優しい声で囁く。眼鏡の奥の怜悧な瞳がさっきよりも更に傍で、見たことのない光をたたえながら俺を見つめていた。
「わ…わっ!?」
その目に気を取られたわずかな隙に平衡感覚が奪われる。気がつけば、いつもは俺たちがスコアを読んだり休憩に使ったりする大机に身体を預け、天井を背にして微笑む主人に見下ろされていた。
「お、しおきって…マスター!?」
乱暴に押しのける事なんて勿論できるはずもなく、主人の腕を反射的に掴みながらもただ見上げる事しかできない俺の首から、マスターはマフラーを引き抜いた。
「マスタ…っ!」
「黙りなさいKAITO」
唇をまた唇で塞がれた。それどころか、ぬめる熱い舌先で唇を辿られ、口内を犯される。
「ん…ぅっ」
初めて与えられた熱にぞわりと肌が泡だった。さっき頬を撫でられた時と同じだ。俺にはないはずのプログラムが勝手に身体に命令を出しているような不思議な感覚。目が意思とは裏腹にきつく閉ざされる。
「ふぁ…」
喉の奥まで舌を差し入れられざらつく表面で上顎を辿られると、くすぐったいような痺れに舌が震え、鼻にかかるような声が漏れる。
声が売り物のボーカロイドなんだからこんな中途半端な声を出すのはプライドに反するし、何より恥ずかしいのに、マスターの舌が歯列や歯茎を撫でる毎、くちゅくちゅと聞くに堪えない音が立つ毎、口の中に溜まった、主人のものかも己のソレかもわからない唾液を飲み干す毎に、身体から力が抜け、制御がどんどん利かなくなっていった。
最後に舌先を甘く噛まれ、じんわりと甘い痺れを残してマスターの唇は離れていく。恐る恐る開けた瞳は涙でうっすらとにじんでいたのに、俺とマスターの舌先をつっと透明な糸が結んでいるのがはっきりと見て取れて…やけに生々しくて…益々顔が熱くなった。
「ああ、更に赤くなっているな。どうしてなのか…答えなさい、KAITO」
「…わかりません…」
何か答えなければいけないとそれはわかっていても、答えを持たない俺に答えられるわけがない。乱れた呼吸の下で何とか小さく呟くと、マスターは呆れたように溜息を零した。
「っ!な、にを…っ」
「お仕置きだと言っているだろう」
両腕をさっき引き抜かれたマフラーで頭上に一まとめにされ、抗議の声を上げる俺を毛ほども気にしたそぶりを見せず、マスターは普段と変わらぬ声でそう答えを返してきた。
この状況とその冷たい態度を見て、ひりひりと焼け付くような焦燥感に顔が歪む。
怒らせてしまったんだろうか?
俺は主人の所有物なのに、主人の命令に従えないのも更に辛くて、ぎゅっと唇を引き結ぶ。
でも、だって、わからないんだ。
だけど、マスターがそんな言葉を望んでいない事くらいは俺にだってわかる。
見捨てられるのは嫌で、許して欲しくて、ごめんなさいと囁くと、主人は驚いたように顔を上げ、探るように俺を見下ろしてきた。
「ごめん、なさい」
「何を謝っているんだい?」
「怒らせて、ごめんなさい、マスター…」
「……怒っていると思っているのかい?」
「違うんですか?」
「さぁ、どうかな」
はぐらかすように目を細めた主人は、また俺の唇にキスをした。輪郭を辿るように啄ばみ、尖らせた舌で顎を辿り、筋を撫でるように首を滑っていく。
「く…ふっ」
くすぐったくて身を捩ると、逃げる俺を咎めるように、上衣のチャックが下ろされていく。大きくて熱いマスターの手が中に滑り込み、俺の肌をざらりと撫でた。
「っ!やめて、くださいっ」
自由にならない手で、そっと主人の肩を押す。主人が触れる場所からぞわぞわと痺れにも似た得体の知れない感覚が這い登っていくのが堪らない。…それが妙に甘いから、余計に。
「俺、は…セクサロイドじゃ、ない」
なんと表現すればいいのかわからない、不思議に落ち着かない電気信号がCPUから全身に広がっていく。哀しい…のかもしれない。
主人の真意がわからなくて、それが不安で堪らない。首を振って手のひらから逃げるように上半身を起こそうともがいてみても、人間に危害を加えられないように設定されたプログラムのせいで大きく抵抗する事ができなくて、今は酷くもどかしい。
別に主人に乱暴するつもりも反抗するつもりも毛頭ない。…ないけど、それでも今はここから逃げ出したかった。
「そんなつもりはないよ」
肩を押し続ける俺の手を捕えて片手でテーブルに縫い付け、静かに俺を見下ろす態度は悠然としていて楽しげなのに、目だけはいつものそれとは違い、烈火にも似た光をともしている。なのに…声は、普段どおり…いや、普段より更に優しく、甘く、低く、掠れて響いた。
「愛してると、言っただろう?」
「んっ」
素肌に小さな口付けが落とされる。鎖骨から滑り、服を俺の肌からゆっくりと剥ぎ取りながら胸板を辿った柔らかな唇は、そのまま胸の頂きに吸い付いた。
今まで知らなかった痺れがそこから背骨を伝って腰に響き、思わず身体が揺れた。主人はそんな小さな俺の反応も見逃さずに小さく呼気で笑い、ソコにぬるりと熱い舌を這わせてくる。
「ひっ…ぁ…」
たっぷりの唾液をまとった弾力のある肉にソコをぐにぐに押し潰され、輪郭を辿るように這われ、乳輪ごとじゅるじゅると卑猥な音を立てて吸い上げられて呼吸が乱れる。熱くてテーブルに身体を押し付けるように身を引くが、主人は執拗に俺を追い、逃げた事を叱るように緩く歯を立てた。
「やっ…マスターっ!」
わき腹から胸にかけてを撫でていた熱い手のひらがするりと滑って太ももを…更に、足の間を…辿っていく。驚きやら恥ずかしさやらいたたまれなさやら驚きやら恥ずかしさやら…ああもうっ!とにかく声を上げても手は止まらず、ジーンズの布越し、まるで揉むように動いて俺自身を刺激する。
「ふっ…ぅや…だっいやだ、ますたぁ…っ」
マスターの触れる箇所全てが熱い。甘くて、熱くて、知覚センサーが狂っていく。吐く息も熱くなっていて、俺は自分が壊れてしまうんじゃないかと、そんな益体もないことを考えた。
びくびくと腰が跳ねる。俺自身はもう熱を持ち出し、愛撫をねだるように首をもたげだしていて、ジーンズの硬い布が辛い。自然と足を閉じるが…
「KAITO、足を開きなさい」
「ふぁ…んっますた…っ」
「言う事が聞けないかい?」
そこで喋らないでくれ…っ乳首に舌が、息が、かかって…っ
掠れた悲鳴ばかりが口をつく。こんな声聞いて欲しくないのに我慢する事も難しい。
力の抜けた下肢を開かれ、脚の間にマスターの身体が入り込んでくる。また布越しに指が触れ…いや、違う。ボタンが弾かれ、チャックが下ろされて…っ
「い、やだっ」
反射的に脚を閉じてもマスターの腰を挟むだけで、手の侵入を阻めない。テーブルの上にずり上がって逃げようとしても、マスターの身体で押さえつけられて未遂に終わった。
「ふっんんっ」
下着越しに丸みをなぞられ、先端のスリットに緩く爪を差し入れられ、思わず背が反った。…こんなところまで人間そっくりに作らなくてもいいのにっ
主人に差し出すように弧を描いた胸元で、羞恥で赤くなって目を閉じる俺を視線だけで見上げながら、マスターはくくっと喉の奥で笑った。
「こんなになっているのに、嫌なのか?…ああほら、濡れてきた」
「っや…っマスターが触るか、ら…っ」
そんなのをわざわざ指摘しないで欲しい。
マスターの言う通り、トランクスが湿ってペニスに張り付き、冷たくて気持ち悪い。両手を抜こうともがいたり首を振ってみても、マスターは呼気で小さく笑っただけでまた乳首を音を立ててすすり始めた。…すすりながら、下着越しにペニスも上下に擦りあげる。
「っ…はぁっ」
俺だって自慰位はする。頻度はそれほど高くないけど。ただし、それは本当にただの処理作業でしかなくて、気持ちいいとかもっとしたいとかそんなことを思ったことはなかった。
でも、マスターの唇と指先が与えてくる熱はそんなもの比ではなくて、堪えきれないすすり泣きみたいな掠れた声が何度も何度も喉を震わせる。気持ちよくて、ともすればねだるように腰を突き出してしまいそうになる体を制御する事しかできないのが恥ずかしくてどうにかなりそうなのに、それでもマスターは愛撫の手を止めてくれようとはしない。
「やっあっますた…ぁっ」
カリ首から先端にかけてを何度も擦られ、敏感な裏筋を押し潰すみたいに揉まれ、根元からやわい皮ごとずりずり上下に擦られて、壊れた水道みたいにカウパーが溢れる。それが下着をじっとりと汚す。…多分、マスターの指も。
「ふぁあっあ…っんぅうっ」
俺はひたすらバカみたいに喘いで、喘いで、初めて人に触れられる羞恥と、情けない声を聞かれる羞恥と、はしたなく乱れされる羞恥にぼろぼろ涙を零した。
「もっ やだっ ホントに、いやだっ…ますたっますたぁっ」
「KAITOは、僕が嫌いかい?」
「んんっ」
愛撫の手が一瞬止まり、躊躇いながら目を開けた俺の唇にまた唇が触れる。柔らかく啄ばむような、なだめるような優しい口付けは妙にくすぐったくて、何度も降ってくるキスの合間に舌先で自分の唇をなぞると、それに応えるように熱い舌が滑り込んできた。くちゅくちゅといやらしい音を立てながら、俺の口の中でマスターの舌が蠢く。舌を絡められると首の裏側から尾?骨まで、ぞわぞわと産毛が逆立つような痺れが抜けて、全身から力が抜けていった。
「嫌いかい?KAITO」
そんなキスの合間に、マスターは囁くように繰り返す。
「…っきらい…じゃ、な…けど…っ」
「なら、嫌じゃないね?まさか、SEXを知らないわけじゃないだろう?」
「せ…くす…?」
そ、りゃ、勿論知らないわけじゃない。じゃないが、改めてそう言われて、俺は驚きに目を見開いた。
「愛してると言っただろう?」
そんな俺を見ておかしそうに眼鏡の向こうの目を細めた主人は、俺の唇を食みながら…うわっ
「ま、すたっきたな、いっ」
じ、直に、俺の下着の中に手を滑り込ませて…きた。
すっかり立ち上がったソコを握り、ぬめりを広げるように手のひらで撫で擦る動きが淫猥で、気持ちよくて、でもものすごく恥ずかしい。身体を捻ってみてもまるでねだるように腰を振っているような動きしか取れないのが更に羞恥を煽って…ああ、だめだ。頭の奥でビープ音。熱暴走してしまいそうだ。
「んんっはぁあっ」
下着ごと下肢の衣類が引き下される。空気に晒されたペニスは開放を喜ぶようにぶるりと震えた。濡れたソコに外気が当たって心もとなさに息が詰まる。
「流石にピンク色、とは行かないみたいだけど…色が濃いわけでもないね」
「っ…」
じろじろと無遠慮な視線で俺のペニスを観察した後、マスターは一言そう呟くと俺の身体をぐるりと裏返した。テーブルの上に上体を乗せ、足の裏には床の硬さを感じる。…マスターの視線から身体を隠せるこの体勢に少なからずほっとしたのが間違いだった。
「ひっ」
俺の身体を上半身で押さえつけた主人は、片手でペニスを弄びながら、もう片手で…尻の狭間をゆるりと撫でた。
「んっ…や、マスターっ きたな、い…」
何度かソコを上下した長い指先は、俺が零した滑りを伴ってゆっくりと俺の中に押し入ってくる。
痛みはほとんどなかった。ただ異物感が酷く気持ち悪いし、自分でも触れたことのないようなところを主人に侵されているのだと思うと、妙な背徳感を覚えた。
なのに、前に施される愛撫が悦すぎて逃げ出そうという気力さえ奪っていく。
「力を抜いて、気持ちいいほうに集中しなさい。大丈夫だよ、KAITO」
何が大丈夫なものかっ ぐちゅぐちゅと濡れた音。粘膜をかき回されている音。後ろをかき回されるのは気持ち悪いのに、ペニスの先、尿道口をくりくりいじくる指とか、裏筋を撫で回す手のひらが無性に気持ちいい。
「んっ…んん」
腰にたまった熱が体の隅々まで支配する。マスターの指はゆっくりと俺の中を探り、円を描いてソコを広げようとピストンを繰り返す。
時間をかけて体の中を探る指がゆっくり増やされ、比例するように前への愛撫が激しさを増す。身体の中で快感がぐるぐるとめまぐるしく走り回り、あちらこちらの回路で火花をちらす。だけどやっぱり腹の中が気持ち悪い。
いつの間にかまた閉じていた目の裏は真っ赤に染まっていた。
「ま、すた…っ も、やだ…っ」
ひくっと喉がしゃくりあげる。溢れた涙が頬を伝う些末な感触さえ快感を煽る火種になる気がして、…怖い、って言うのは、きっとこんな感情なんだろうな、と妙に冷めた頭の奥でそう思った。
「うん?」
「…痛…ぃっ」
違う。そんなことが言いたいんじゃない。
身体の中で暴れる熱をどうにかして欲しいんだ。
神経回路が焼き切れそうに疼いている。高ぶった身体は羞恥を忘れてただただ絶頂を望んでいるし、ペニスへの愛撫は焦らす事無く与えられているのに…異物感と指が増やされるごとに強くなっていく痛みが気を散らして開放を迎えられない。変になりそうだ。
テーブルに爪を立て、冷たい木の感触に自分から胸を擦りつけ、腰を揺すって快楽をねだる俺。…なんて浅ましい。
なのに最後に残った欠片のような理性のお陰で、イかせてくれと淫らな願いを口にすることもできない。
「…いた…ぃ…っ」
ぽろぽろ溢れた涙がテーブルに水溜りを作っていた。だらしなく開いた唇からはせわしない呼吸と拭う余裕さえない唾液が零れ、顎を濡らして気持ち悪い。汗で張り付いた髪の毛もくすぐったくて少しかゆい。
「好きだよKAITO。…そのまま力を抜いていなさい。イイコにできたらイカせてあげるよ」
指が引き抜かれ、まだ何か埋まっているような違和感を覚えひくつくソコに、熱い何かが押し当てられる。それがマスターのペニスだと気づいたのは、強い圧迫感に襲われてからだった。
「ぁ…あああっっ!」
喉がおかしくなるのではないかと思うような悲鳴が漏れた。後口の痛みに視界が赤から黒へと変貌しかかり…ペニスへの強い刺激で引き戻された。
「…落ち着いて、ゆっくり呼吸しなさい」
痛いというより…熱くて、荒い呼吸を懸命に繰り返し、力なく首を振る。
ひっ…はっ…と短く浅く早い吐息を吐き続け、テーブルに爪を立てて熱から逃げようと身体をはいずらせるけれど、耳の裏に口付けられ、腰をきつく抱き寄せられて無駄な抵抗に終わった。
「愛してる」
初めて受け入れる圧倒的な熱に、頭の奥は霞がかかったようにぼんやりしているのに、与えられる痛みや快楽は鮮明で苦しい。
「愛してる」
自身は動こうとせず、俺のペニスに指を絡め、宥めるようにゆるゆると擦りながら、マスターは掠れた声で何度もそう囁いた。…マスターの呼気も上ずっていて、それが俺のせいなんだと思うと、少しだけ痛みが引いていた。
「ま、すた…ん…むぅ」
俺の腰を抱くのとは逆の手が口元を辿り、俺の口の中をくちゅりと犯す。柔らかな頬の粘膜をくすぐられる。舌を摘まれたり指の腹で擦られるのがとても気持ちよくて、自ら舌を指に絡めると、俺の耳の後ろに口付けたままマスターは甘い溜息を零した。
「動くよ」
「ひっ…っ」
そのささやきがくすぐったくて肩を揺らしたのと同時にずるりとマスターが引けて行った。ぎりぎりまで下がった主人は、何かを探すように小刻みに腰を揺すりながら奥まで戻って来る。…何度も。
熱さと異物感に顔をしかめ、息苦しさと圧迫感から逃れたくてペニスを弄ぶ指先に意識を集中しようとした…その時だった…。
マスターの切っ先がソコを掠めた。
同時にひぃっと妙な音を喉が上げる。どぷっと白濁の液体が俺のペニスから溢れてマスターの手を汚した。イッたわけではない、と、思う。ただ、押し出されるように熱が溢れた。
「…ま、すた…っ?」
「大丈夫。…感じてごらん」
「や…ぅああっ!」
先刻までのゆったりした動きが嘘のように一転し、執拗にソコを狙って主人は腰を振るう。
そうなると、後は早かった。
「やっあっますっあああっ」
焦らされた体は、ソコを突かれ、擦られるだけですぐに追い上げられていく。ペニスを扱く手もその動きに合わせるように上下にスライドし、口の中を犯す指も同じリズムで舌を擦る。
「…っ…お前が愛してると言われて、キスされて赤くなったのは」
耳の裏側でマスターが何か囁いている。けれど強い動きで下腹を抉られ、突かれ、擦られて、主人の言葉はCPUにまで届かない。
「ぅやぁっい、ま…っわかんな…っ」
「憎からず思っている僕を、急激に意識したからだよ」
「やぁあっか、いろ…やき、きれ…っふぅっぁあ」
もう限界だ。絶えられない――っ!!
高く掠れた声も、縛られたままの手首も、ぐちゅぐちゅとたつ濡れた音も、マスターの吐息も…。全てが俺を追い上げて、追い詰めて…。
「…っ…愛してるよ、KAITO」
「―――っっ!!」
きゅっとペニスの先端を緩く抓まれて、俺は絶頂に追い上げられた。ぼたぼたテーブルに白濁が滴っていく。同時に、腹の奥で熱いしぶきが弾けたような気がして…
そこで、俺の意識はブラックアウトした。
* * *
目を開けると、見慣れない天井が視界に入った。
「…?」
妙に重い首を動かして視線を転じると、見たことはあるものの余りお目にはかからない棚やら机やら…ああそうか。ここ、マスターの寝室だ。
………。
俺に組み込まれた優秀なメモリーが、終了をかける直前までの出来事を見事にクリアに再生してくれて…柔らかなベッドの中で、俺は見事なまでに真っ赤になった。
多分、途中で回路が熱に耐え切れなくなって強制終了したんだと…思う。スタジオのテーブルでその…シテ、いたから…ここまでは、マスターが運んでくれた…のかな。多分。
全身けだるいものの湿っぽい感触はどこにもなく、清潔なパジャマに身を包んでいるところを見ると、これも多分、マスターが後始末をしっかりしてくれたってこと、なんだろう。手首を戒めていたマフラーもなくて、うっすらついた赤い跡には軟膏を塗りこんだような形跡もあった。
…なら、主人はどこだ?
「マス…」
ベッドから抜け出して探してみようとして、尻を中心に全身に広まった痛みにベッドに崩れ落ちた。シーツに埋もれたまま居たたまれなくて顔をしかめながら声をあげてみると…余りにもがらがらに乾いた声が出て驚き、言葉が途切れた。
余りにも酷い声を認めたくなくて、もう一度喋ろうとすると、痛みに思い切り咳き込んだ。喉がひりひりする。
「KAITO?」
その音を聞きつけたのか軽快な足音と共に扉が開き、隣室にいたらしいマスターが顔を覗かせ、俺を認めるといつもの眼鏡をしていない顔でにっこり微笑んだ。
「どこかに異常はないかい?」
「……」
喉を押さえたまま声を出せないでいる俺を見て面白そうに微笑んだマスターは、一度隣室に引っ込むと、汗のかいたピッチャーを持って俺の傍まで来てくれた。ピッチャーの中には氷の浮いた水が入っている。
ベッドに浅く腰掛けたマスターは、ピッチャーからコップに水を注いで自分の口に含み……口移しで、俺の口内に水を注いでくれた。
「ん…ぅ…」
上手く飲みきれなかった水が唇の端から零れ、顎を伝って落ちていく。それを指先で拭ってくれながら、またマスターは水を含んで俺の唇へ。
「声ががらがらなんだろう?」
「…」
「アレだけ鳴けば当然だ。安心しなさい。2,3日で元通りの声が出るようになるから」
唇が触れる距離でさっきまでと同じ、甘く響く優しい低い声で言いながら、小さな子供にするようにシーツにうずもれたままの俺の髪を梳いてくれるマスターの指先はさらりと乾いていて心地いい。
「もう少し休みなさい。ここを使って構わないから」
「…」
「声が元に戻ったら、その時に…返事を聞かせて、KAITO」
ちゅっと軽い音を立ててもう一度だけ口付けてから、マスターは離れていった。でも、髪を撫でてくれる手はそのまま。
けほんともう一度咳き込んで喋るのを諦めた俺は、思いがけず得たインターバルに少しだけ安堵し、小さく頷いてから目を閉じた。
主人の指の感触を追いながらOSをシャットダウンし、スリープモードで夢うつつにこの先を、少し前を思い、ほんの少しだけ憂鬱になる。
けれど。
それ以上にドキドキしていた。
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あんまり鬼畜くなくてごめんなさい orz
ゑろぬるくてごめんなさい orz
お目汚しごめんなさい orz