・うっかりレンに踊らされてます。(わたるが)
・双子はまだ勉強中なので性格が安定してませんがご愛嬌。
・ていうかノリと勢いだけでやった。
・正直反省している。
・ゑろはなし。でもお兄ちゃんは受けと主張し隊


「お兄ちゃ〜〜んっ♪」
「ぇ?…うわっ!」
「へへ〜♪」
「……リン、人にいきなり飛びついちゃ危ないって言ってるだろう?」

 …面白くない。

 視線に質量があればとっくにぺしゃんこに押し潰しているだろう強さで、おれの片割れに抱きつかれている真っ青な髪の毛の俺たちの『お兄ちゃん』を睨む。…鈍いっぽいから意味ないけど。
 『お兄ちゃん』ことKAITOの背中に張り付いて、でっかいリボンを揺らしながら嬉しそうに楽しそうに、頬を真っ赤にして、いっぱいの笑顔を浮かべているリンは、今きっと楽しくて仕方ないんだろうな、なんてことはちゃんと理解してるけど…やっぱり面白くない。
「あ!めっこねーちゃんっ♪」
「うわぁっ!?…リンっ!人に飛びついちゃ駄目だって言ってるでしょ!?」
「えへへ〜〜♪だってめっこねーちゃんふぁふぁで気持ちいいーんだもん♪」
「どこのエロオヤジよあんたは…」
 あーあ。今度はMEIKO『お姉ちゃん』だ。
 …おれが面白くないのわかんないのかよ。…リンのバカ。
 
 …このパソコンに来る前。ほんのちょっと前まで、ずっとロムの中の暗いトコに二人っきりでいて、暗いのを嫌がっていたリンの手を握って笑わせてたのはおれなんだ。ストアに並んで、どんなマスターに買ってもらえるのかな。どんなマスターのところに行くのかな。どんな歌を歌えるのかな。マスターに喜んでもらえるかな。マスターはちゃんと歌わせてくれるかなって不安でべそべそ泣いてたリンの頭を撫でて、笑わせてたのはおれの仕事だったんだ。

 だけど、おれの気持ちなんてツユ知らず、リンは今、『お兄ちゃん』と『お姉ちゃん』たちに夢中。
 …リンはコドモだから仕方ないんだってわかってる。真新しいもの、一緒に歌えることが楽しくて仕方ないんだ。…リンはちゃんとおれのこと大好きなんだってわかってる。…わかっててもさ。




 マスターが出かけていてパソコンがどこに向かっても開かれていない時、ボーカロイドたちはOSが用意してくれたフリー空間で思い思いに寛いで過ごす。
 いんたーねっとスペースからグーグルやヤフーが遊びにきたりすることもあるし、本も音楽再生ソフトもある空間だから暇つぶしにはもってこいだし。人間みたいに運動したければ道具も広場も大家が用意してくれるし。
 …おれはリンに付き合ってここにいるだけだけどね。リンを守るのはおれの役目だからさ。
 大家VISTAが、マスターがいない時にだけこっそりプログラムしてくれるソファの上に膝を引き上げ、両腕をその上に投げ出しながらぼーっとリンを見続ける。…ああ、今度はミク『お姉ちゃん』に飛びついてるよ。…こけた。
 リンの飛び掛り攻撃を支えられないミクはそのまましりもちをつき、リンを腰に乗せたまま、リンと同じように顔を真っ赤にして楽しそうにくすくす笑っている。傍にいたMEIKOもばかねーなんて言いながら笑っていた。
 …やっぱり面白くない。

「レンも混ざればいいのに」
 不意に声をかけられて見上げると、ソファの後ろから背もたれに両腕を乗せてもたれかかる『お兄ちゃん』がおれを見下ろして笑っていた。リンの大好きな、優しそうな笑顔で……アイスを差し出しながら。
「一緒に遊びたいんだろ?」
 薄い水色の棒アイス。これも多分大家がプログラムしたものなんだろうな。舌で触れるとちゃんと冷たくて甘い。
 受け取って、KAITOと同じようにソレを舐めながらまたリンを見つめる。…一瞬目を離した隙にナニがあったんだか知らないが、今度はミクと結託して二人でMEIKOに抱きき、流石に支えきれなかったらしい彼女まで床に引き倒している。…満面の笑みで。
「そーいうんじゃないよ」
「レンは俺が嫌い?」
 思わず見上げても、KAITOは穏やかな笑顔を浮かべているだけだ。…俺と同様に三人を見つめながらアイスを舐めているだけで、何かを身構えている様子も俺を意識している様子もない。
「…なんで?」
「いっつもここんとこにぎゅーって皺作って俺のこと見てるから」
 自分の眉間をちょんっと細い指先でつついてから一口アイスを齧って……思いっきり顔をしかめてコメカミを押さえた。……沁みたのか?
 鈍くて絶対気づいていないと思ってたのに見抜かれていて動揺したけど、その顔に思いっきり毒気を抜かれた。なんなんだよこのボーカロイド。
 思わずまじまじ見つめる先で、彼は苦笑しながらアイス美味しいね、なんて誤魔化している。コメカミに添えられた手が、まだ頭痛が治まっていないことを現していて無償に可笑しい。
「もしそーだったら?どーすんの?」
 変な感じ。ずっとリンを取られた気がしてむかむかしてたのに。
「ん〜」
 やっと頭痛が止んだのかコメカミに押し当てていた手をソファの背もたれに戻し、上半身を寄りかからせながらKAITOは唸り、唸りながらまたぺろりと舌先でアイスを舐める。
「そーだなぁ〜…。とりあえず毎日アイスを一緒に食べて、こうやってMEIKOたちを一緒に観察して、隙あらば皆で遊べるようにもって行くかな〜」
「…は?」
「だって俺はレンのこと大好きだからね」


 ………は?


「もうっ!KAITO!見てないで助けなさいよ!」
「はいはい」

 思いっきり何かをのたまった兄上様は、ミクとリンにのしかかられたまま胸やら腹やら太ももやらを枕にされて動けないMEIKOに呼びつけられ、アイスを咥えたまま走って行ってしまった。

 えーと…。何だって?

 ぽかんと青い背中を見つめながら数度瞬き。
 大好きとか言いましたか?おにーさまよ?













 …。











 手がひんやりして我に返ると、アイスが溶けて手がべとべとになっていた。
 慌ててソレを舐めてきれいにするが、頭の中ではKAITOの台詞がぐるぐるぐるぐるエンドレスリピート。
 す、きって…すきってだって…っ だ、だいすき!?
 かーーーっと顔が熱くなっていく気がして、残っていたアイスを一口で口の中へ。
「〜〜〜っっ!」
 うわっきたっキーーー…ンってっ!
「………はぁ」
 見やった先では、KAITOがリンを抱き上げてMEIKOを救出しているところだった。
 …リンの獲物がまたお兄ちゃんに戻ったのは言う間でもない。


 …どうしよう。おれ今…KAITOに嫉妬してるのかリンに嫉妬してるのかわかんないかもしんない…。













オマケ〜その夜の大人ボーカロイドたちの会話より抜粋

「KAITO、あんたレンに昼間何か言ったの?」
「え?レン? …ああ、大好きだって言ったよ?」
「…大好き?」
「ずっと待ってた男兄弟だもんね(にっこり)」
「………(……憐れ、レン)」


レン×KAITOのイメージはこんなかなと思いつつ書いてみました。
サーセン^^

レンの一人称は「おれ」 KAITOの一人称は「俺」
途中間違ってたらご愛嬌って事で^^;