4・「何でこういう大事な時に限って…!」
「ジャンケンって言うのは得てしてそういうものだ」<4/5・キョンハル>
アヒル口で拗ねるハルヒの頭をぽん、と軽く撫で、俺に勝利をもたらしたVサインを目の前にかざしてやる。
むぅぅっと更に唇を尖らせるハルヒは、いつもの高慢電波具合と相まって、可愛いといえなくもない。
「もー。仕方ないわねー。…はい」
「サンキュ。…うん、勝利の味は格別だ」
「バカなこと言ってんじゃないわよ」
朝倉がくれたパックジュースを賭けたジャンケン。
勝者は俺。
古泉曰く、願望を実現する能力とやらがハルヒにあるとすれば、これはハルヒが俺にくれた勝利だって言うのか?…ばかばかしい。
「チャイム鳴るわよ。早く飲んじゃいなさいよ」
ぷいっと顔を外に向けながら負け惜しみを言うハルヒ。ちゅごご〜と音を立ててジュースをすすりながら、ふと思い立ってストローを差し出した。
「一口飲むか?」
「…」
ハルヒは数秒、俺とストローを見比べていたが、大人しくジュースを受け取り…
ちゅごごごごごごごご
「おま…っ!」
「ふふん、油断したわねキョン!勝負っていうのは、勝敗が決まった後も続いてて、油断した奴の負けなのよ!」
空になったジュースのパックを俺につき返しながら、カサブランカのような笑顔を浮かべるハルヒ。
…まだ半分も飲んでなかったってのに…。
「きったねーぞっ!!」
「油断したアンタが悪いんじゃない!」
勝ち誇った顔でまた俺から視線をそらし、しかし堂々と胸を張るハルヒ。
ちょっと離れた場所で谷口と国木田がこっちを見ながら何か言っている。「なぁ、あそこの夫婦の片割れ、殴ってきていいか?」「ひがまないひがまない。キョンは昔っから変な女が好きだって言ったろ?」…あいつらは、後で一発ずつ殴ってやるとして、この女はどうしてくれようか…っ!!
「さぁ、授業始まるわよ。早く準備しなさい!」
…ま、結局いつも、このひまわりみたいな笑顔に毒気を抜かれて、俺はすごすご引き下がるんだけどさ。
情けないね、全く。
会話お題配布:トランプ配布所様